【実写】劇場版鋼の錬金術師を見てきたけど私はダメだった【ネタバレ有】
原作ファンが大激怒しがちな漫画原作の実写映画化。
その魔の手がついに鋼の錬金術師に。
試写会?先行上映?に行った人によるボロクソレビューを見たり、そもそも漫画の実写化ということで、個人的にあまり期待せずに(むしろ、ここまで叩かれるなんて本当にヤバいのか?という怖いもの見たさ / 身の周りの知人たちに対する人柱になろうという義務感)公開初日の朝イチから見に行ってきました。
ハガレンと演者に対する私の理解度
どんな立場の人間なのかというのを先に書いておきます。
私は
- 漫画もアニメも連載当時はたまに見るくらいでズブズブではない
- 現在、ちょうど…で放送している鋼の錬金術師FAを毎週見ている
- プライムビデオの鋼の錬金術師(無印)も見始めた
- 原作はさらっと読んだくらい&ちょいちょい読み飛ばしている
- 芸能界に死ぬほど疎いので「山田涼介」「本田翼」ですら「名前は知っているが顔は覚えていない」というレベル
という原作ファンとは言えないし、かといって演者ファンでもない中途半端な立ち位置。
ストーリーもザックリしか把握していないし、キャラに対してそこまで深い解釈もしていません。
こんなんでなぜ見に行ったのか、というと完全に怖いもの見たさです(2度目)。
酷評受けてる作品って無駄に見たくなるよね……見たくない??
CGの出来にまつわる良かった・悪かった
邦画のCGといえばクソみたいな暗黙の了解。
実写ハガレンもファンタジーということでゴリゴリに使われているわけです。
どうでもいいけど、CGとVFXと合成の違いについて誰か教えてほしい。
とりあえずここでは全てCGと呼んでいきます。
あとここから語尾の処理が適当です。ですますはここまでです。
良かった
エドが地面から槍を錬金するシーン。
地面がうごめいてズズッと槍が出てくるのは、作中錬金術シーンで一番見ごたえがあったと思う。
アルフォンスの鎧がどちゃくそいい。
すごいよ、何あの映り込み。めっちゃリアル。
それに鎧の重さが伝わるような動き方をしていたのも印象的。
序盤に出てくる岩犬モンスターもなめらかで良かった。
なめらかに岩のゴツさを表現している(?)
アルと岩犬モンスターは洋画に登場してても大して違和感がなさそうだと思った。(それでもまだマーベルあたりのトップレベル作品だと厳しい)
それから街もCGで合成しているらしい。
らしい、というのは単純に自分が気づかなかっただけである。
「は〜、世界にはこんなファンタジーみたいな美しい街並みが存在するんか〜」くらいにしか思っていなかった。まぁそういう美しい街並みは実在するが。
自分の目が節穴ということもあるが、違和感がないCGというのはCGとして完璧ではないか。
ちなみにこの3つ、全部序盤だから。
序盤でCGの良いところが終了するなんてそんな馬鹿な話が……
悪かった
局所的に質の良いCGが存在していたこともあって、それ以外のCGは酷さが強調されていたと思う。
「邦画だし多少はね???」→「あんなに良いものが作れるのになぜなんだ……」の違いは大きい。
例えば、エドとアルの人体錬成シーン。
先程挙げた良かったところよりも更に前に出てくるので、「オッこれを見続けるのか!?」と思ってしまった。すごいぞ。
嵐のような暗雲がぐるぐるするCGは単体ではいいけど、そこに人やらものやらをぶち込むと一気に安っぽくなる現象。複数のものを違和感なく組み合わせるというのは、やはりどんな業界でも難しいのか。
なんだあの火炎放射器は。3流特撮映画か。炎が直線的すぎるし見た目が貧相だった。
マスタング大佐の炎といえば、爆発寄りだったり閃光寄りだったりと、迫力あるいは美しさが素晴らしいと思っていた。ようするにビジュアルゴリ押ししやすいと思っていたのに、このザマである。
貧相な火炎放射錬金術をそんなに長く見せつけないでくれ早くその炎をしまってくれ、と思わざるを得なかった。
思い返してみれば、ファンタスティックビーストあたりの魔法的な華やかさを期待していたのが悪かったのかもしれない。
良いCGがあることで悪目立ちしてしまったのはCGだけじゃない。
良いCGと絡み合うタイプの演技も辛かった。
例えば、前述の岩犬モンスターとエドの戦闘シーンは露骨だった。
モンスターのゴツさに対して、演技が軽いというのか噛み合ってなかったと思う。
俳優に一体どんな大きさのどんな相手と戦っているシーンなのか、ちゃんと説明していたのかな?と思ってしまうほど。
このシーンに関しては0巻で触れられているが、目を疑った。
「説明はしてましたけど、演技が大きかったのでモンスターを演技に合わせて大きくしました」
大きくしすぎじゃない……?
キャラにまつわる感想
長々と言うことはない。受けた印象を書く。演技がどうとかはあんまり触れてない。
エド
ヤンキー感がちょっと強めなエド。煽り顔芸。
子供時代の髪色がヤンキー親に無理やり染められました!という感じ。
アル
釘宮さんじゃないが不安だったけど、見てたら慣れた。でもアニメで見たらやっぱ釘宮さんだな、と思った。これは他のキャラにも言える。
子供時代の髪色がヤンキー親に無理やり染められました!という感じ。
ウィンリィ
元気っ娘に極振り(マイルド表現)。まぁスカーがいないししょうがないね。
マスタング大佐
顔がすき。和製マスタングということで私の中では納得した。「ヒューーーーーーーーーーーズ!!!!!」と炎以外はすき。エドへの当たりが強くなった?性格悪くなったな、という感じ。
ホークアイ中尉
マスタング大佐に恋しちゃってるのが露骨。軍人、それでいいのか。
ヒューズさん
ありがとう、完璧。完璧過ぎる。めちゃいい人じゃん……。しかもナイフ芸も見れる。
ただ、ヒューズさんの死ぬシーンの改変によって、制作側がマスタングアンチなんじゃないかと思った。
ちなみにヒューズの奥さんが最高に日本人だった。かわいかった。
ショウ・タッカー
原作タッカーさんと大泉洋のビジュアルに関する記憶が全然ないおかげか、特におかしいとは思わなかった。むしろ、バッシング受けまくってるあの髪型がマッドサイエンティスト感強くてちょうどよかったと思う。
0巻読んだら「ほんとに見た目を原作に寄せる気なかったんだな」って笑ったけど、私にとってはプラスに働いた原作改変。
タッカーさんにまつわるストーリー改変については、「オッ随分役回りが昇格した(?)なァ!」という感じ。
ラスト姉さん
ヒューズさんの次に最高。マスタングさんと同じくらいすき。美人さん。
「親への愛情もある。人間と同じよ」みたいな台詞あったけど劇中でお父様出てきたっけ。人間への憧れ描写は漫画とかFAより無印の方に近いのか。
グラトニー
げんさくよりきもちわるい。
リアルで常時白目をやられるのがあんなにキツいと思わなかった。
不死の軍団に対して、ラスト姉さんに「残しちゃダメよ」って言われてたけど、めっちゃ逃してない???(ホークアイ率いる軍部に撃ち殺されてた軍団を思い出しながら)
あのあと食べまわったのだろうか。
エンヴィー
かわいそう。あとやたら不健康そう。
続編を作る気があるなら、殺さなくても良かったんじゃないか?いや完全にしんだわけじゃないのは最後見れば分かるけど。
真理
もにょもにょしてる表現はすき。 得体が知れないものという感じ。
ストーリーに関する感想
原作改変やエピソードの再構成は上映時間を考えれば仕方ないけど、その結果は私にとっては面白くならなかった。
兄弟喧嘩
エドとアルの喧嘩は、「自分は実在しない偽物の弟なんじゃないの!?」という不安を感じるアルの台詞を受け止めることなくエドが逆ギレして殴りかかったように見えた。「俺がどんな気持ちでお前の魂を繋ぎ留めたと思ってるんだ!」みたいな。
大事な弟に対して逆ギレして殴りかかるような男が主人公なのかと思うと笑ってしまう。原作からわざわざ入れてくれたエピソードなのにそうなったか。
主人公を奪ったマスタング
後半ではエドとアルの出番が激減し、マスタング大佐に主人公を奪われたよう。前述の喧嘩が逆ギレにしか見えないのと相まって、主役がエド・アルから離れたことで兄弟愛が良かったみたいな感想にはならなかった。
主人公になったマスタング大佐だが、ラスト姉さんとエンヴィーに対する心は「ヒューズの仇討ち」。復讐の鬼。ブチギレお兄ちゃんから復讐の鬼に主人公が移ったのか……。しかも言うほど復讐の勢いはない。
悪役が大して悪役っぽくない
そうして殺された悪役ホムンクルスたちの悪行にしたって、ヒューズさんとマルコーさんの2人を殺めたのがメインだったと思う。人殺しというのは確かに重罪だが、こういうファンタジー作品で出てくる最終的な敵にしては随分生ぬるいのでは?と思ってしまう。
賢者の石を作らせるように研究者に強制していたとか、多くの錬金術師が罪のない人間を大量虐殺することになった歴史的な戦争(?)の引き金を引いたみたいなエピソードが劇中にあったのかは残念ながら記憶から既に消えてしまっているので、ここはあやふやで申し訳ない。
っていうか劇中で目立った悪いやつはホムンクルスよりタッカーさんとハクロ将軍だと思ったし、その2人ともがしょうもない死に方してるしで不完全燃焼がすぎる。
主人公がエドからマスタングさんに移ったのと同様に、敵もホムンクルスからハクロ将軍に移ってしまったというのか。
総括
困惑に次ぐ困惑。
それでも「ひとまずハッピーエンド、次回へ続く!」という終わり方をされて、本気で言ってるのかと。
でも、ここまでうだうだ言ってる割にすっかり忘れちゃってるし、ホムンクルスがどういう立ち位置だったのかもう一回気をつけて見直したほうが良い気がするな。
ストーリーだけ見れば、2時間に収めるならもしかしたらホムンクルス丸ごと出さない方が密度が出てよかったんじゃないかと思う。タッカーさんとハクロ将軍がラスボス。「ホムンクルスが出ないなんてハガレンじゃない!」と思わないでもないけど、ホムンクルスが出た今作がハガレンなのかといえば違うだろう。いっそそれくらいしてくれれば清々しいのでは。
良かったところが完全にないわけじゃないが、「タッカーさんのキメラ周りのストーリー、特に『君のような勘のいいガキは嫌いだよ』が再現された」みたいな「原作の再現がよかった」タイプしかパッと出せなかった。
「実写は原作と別作品だと思って楽しめばいい」のに、良かったところが原作に寄せた所ばかりだなんてそんな都合のいい話はできない。
実写化について考えてみる
「好きな作品は2時間で表現し尽くせるものなのか?」ということを改めて己に問うて生きていこう。アニメだって鋼の錬金術師の原作に比較的寄せているFAなら全64話で1話22, 3分とするとざっくり25時間くらいだ。今作は別に結末まで扱ったわけではないので、ここまで長くはならないが2時間ちょっとに収めるのは厳しいだろう。
設定をちょっと借りた別作品として見るしかない。肉とじゃがいもとたまねぎと人参を使って、カレーが出来るのか肉じゃがが出来るのか、みたいなものだと思っていよう。
今回は肉じゃが作るつもりだったけどうっかりカレールーまで投入しちゃったとか思っておこう。
P.S.
そういやスカーいなかったわけだけど、ニーナとアレキサンダーのキメラはどうなったんでしたっけ。